大判例

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東京高等裁判所 昭和46年(う)3149号 判決

被告人 真下梅男

〔抄 録〕

被告人車は先行車(当審に於て被告人は先行車がなかった旨供述しているけれども記憶違いでないかと思われる)と約一〇メートルの車間距離を保ち、時速約五〇キロメートルで走行中、進路が狭くなる手前約五メートルの地点に於て突然他車に大きな排気音と共に左側より割込まれ、その際冷静に対処せず、心理的に動揺し、且つ、接触等の危険を感じ、突嗟に右に転把した為、対向車線に進入したことが認められる。<中略>

原判示事実はその挙示する証拠により被告人の過失の点をも含め優に之を認めることができ、且つ、被害者には過失は認められないのであるが、本件被告人の右転把並びに対向車線内走行について、前記左側より追越した他車の無謀とも思われる走法が大なる影響を与えていることも、これ又、之を認め得るところである。而して本件事故発生の原因の中で後者のもつウエートはかなり重いといわねばならない。

記録並びに当審事実取調の結果によれば、被告人は、所謂責任保険により、被害者山口秀晴関係で金五百六十九万一千二百円を、大塚誠剛関係で金三十一万五千五百九十円を支払い、それぞれ示談が成立し、これらの中、被告人は自己負担で金二十万円を支出していること、被告人が現在運転手をやめ、精肉業を営み、妻と子供三人を養育していること、本件事故の原因としては、前記認定の通り、被告人の過失並びに追越車の無謀運転等が認められるのであるが、その中で後者の占めるウエートは極めて重く、之に比して本件結果に対する被告人の過失は軽度であると認められること等諸般の情状を考慮するときは、被告人に過去交通法規違反の科料刑三回並びに罰金刑三回(最高四千円)の前歴のあることを勘案してみても、今回に限り、被告人に対しては刑の執行を猶予し、社会に於て自力更生の途を歩む機会を与えるのが相当と思われるので、原判決の量刑はこの点に於て過重、不当であり、原判決は破棄を免れない。論旨は結局理由がある。

(八島 栗山 中村)

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